電子帳簿保存法 電子取引の保存方法について⑥ー青色申告の取り消しについて

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電子帳簿保存法、電子取引の保存の第6回、最終回になります。

今回は、保存要件以外の部分でよく質問を受ける青色申告の承認の取り消しについて、私見を述べていきます。

※下記の記載事項はあくまで私見であり、根拠として取り扱うことはくれぐれもご遠慮ください。最終的な判断はご本人様で行うようにお願いいたします。

法人税法127条【青色申告の承認の取り消し】には、青色申告の取り消しの要件について以下のように記載されています。

 その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第1項に規定する財務省令で定めるところに従つて行われていないこと(条文一部抜粋)

この部分だけで解釈するのであれば、書類の保存が財務省例で定めるところに従って行われていない(電子帳簿保存法の規定に従っていない)ことを理由に、青色申告の承認の取り消しを行うことができるように読めます。

 他方、国税庁の事務運営指針には、電子帳簿保存法の規定に従っていない場合の青色申告の取り消しについて、以下のように記載しています。

 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律の要件に従っていない場合における青色申告の承認の取消しに当たっては、電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムの備付け又は保存の程度(電磁的記録に代わる書面等による備付け又は保存の有無とその程度を含む。)、今後の改善可能性等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしいと認められるかどうかを検討し、(・・・以下省略)

 上記の記載により、正しく対応しようとするのであれば青色申告の承認の取り消しまでは行わないようにしようと考えているものと思われます。杓子定規な対応を行う可能性は低そうです。(税務職員の裁量にゆだねられる、玉虫色の記載だなあと思う部分はありますが)

ただし、同事務運営指針上、このような記載もあります。

法第127条第1項第1号に規定する帳簿書類の備付け、記録又は保存(以下「帳簿書類の備付け等」という。)とは、単に物理的に帳簿書類が存在することのみを意味するにとどまらず、これを税務職員に提示することを含むものである。したがって、税務調査に当たり帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず調査対象者である法人がその提示を拒否した場合には、当該拒否は同号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当することになり、・・・(以下省略)。

 書類の保存だけではなく、提示されることを以て初めて書類の保存と認めるということになると解釈すべきであると思われます。そして、電子取引の場合、提示されるべき書類は電磁的記録であるものと考えられます。(法令上電子取引は紙保管を前提としていないため)

 また、電子取引の要件の中には、紙での保管を行っている場合の猶予規定(第2回参照)などありましたが、電磁的記録の保管自体を免除した規定はないことに留意が必要であると考えます。また、令和5年12月31日までの宥恕規定(紙保管を認める規定)は廃止になります。紙保管のみでOKとされることはないという法律に確実に変化しているということです。

 以上の事実から想定するに、少なくとも対応に向けて動いているのであれば青色申告の取り消しとまでされる可能性は低いと思われるのですが、信念として紙保管しか信じられず、まったく電磁的保管もしてないし、調査の際にダウンロードの求めに応じないよという対応を行う(そのような人がいるのかは分かりませんが)場合には問題とされるのではないかと思われます。納税者側も課税側も、現状の税法に合わせた対応を柔軟に行っていくことが必要とされるのだと思います。

 《まとめ》 電子帳簿保存法の規定に対応していない場合、理論上は青色申告の承認申請の取り消しを行うことは可能であることが事実です。法律が存在する以上、正しく対応するというのがあるべき姿であると考えられます。そのうえでどうやって各社ごとの個別事案に合わせて無理なく対応していくかという話になると考えています。

 これまで6回にわたって電子取引の保存方法に関しての概要を説明してきました。少しでも参考になりましたら幸いです。なお、個別事案については顧問税理士等の専門家に相談の上、適切な対応をお願いするところですが、もしセカンドオピニオンとして意見が聞きたいというご要望がございましたらば、お問い合わせのフォームよりご連絡ください。お見積もりは無料です。

参考URL (青色申告の取り消しに係る国税庁事務運営指針)

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm

※本コラムは、掲載日時点の情報に基づく個人的な見解であり、本コラムに記載されている情報は、あくまで一般的な情報であり、特定の個人ないし法人を取り巻く環境に適合した情報ではありません。本コラムに記載されている情報のみを根拠とせず、専門家とご相談した結果を基にご判断頂けますようお願い申し上げます。